遺言状は自分の意思を相続人に伝える大切な手段です。しかし、ただ書けばいいというものではなく、形式通りに仕上げないと無効になってしまう場合もあります。混乱の種をまくことにもなりかねないため、正しく意思を残すためは、自分だけで制作するのではなくプロの手を借りるのも1つの選択です。しかし、遺言状制作のプロはいくつかあるため今回はそれぞれの特徴についてお伝えします。自分に合ったプロを見つける糸口となるでしょう。

内容によって専門家を選ぶ

遺言状を制作できる機関は1つではありません。それぞれの専門分野を活かした遺言状作りができるのですが、専門外の機関に頼んでしまうと余計な費用や手間がかかるためそれぞれの特徴を知っておきましょう。

司法書士

メリット

司法書士とは書類のスペシャリストであり、登記に強い特徴があります。相続した土地の名義を変更することを「相続登記」といいますが、これができるのは弁護士と司法書士のみです。しかし、実務が多く手慣れているのは圧倒的に司法書士!土地関連の相続が多い場合は司法書士に依頼するといいでしょう。また、依頼を受けた他人の財産を管理や処分する業務も可能なので、預金や証券の相続手続きについても問題ありません。

デメリット

遺言状には強いですが、相続放棄や遺産分割調停には制限があるため、円満にいかない相続であれば弁護士のほうが無難です。

税理士

メリット

税や会計のスペシャリストである税理士も遺言状の制作が可能です。相続税申告が必要な場合は税理士にお願いするとスムーズに手続きができます。

デメリット

遺言を扱っている税理士は少なく、見つけるのに苦労するかもしれません。

弁護士

メリット

法定や弁護のスペシャリストである弁護士、相続登記や遺産分割調停にも対応しているオールマイティーな存在です。円満にはいかない相続や、複雑な事情がある場合は弁護士がおすすめ。弁護士と司法書士はできる範囲はほぼ同じですが、法廷慣れしている点や相続放棄手続きや遺産分割調停に制限がないのが特徴であり相続人間の代理も務めます。また、成年後見人の依頼も可能であり、どのようなタイプの相続にも適しています。

デメリット

万能であり頼もしい存在ですが、その分費用も高額です。相続の額は140万円以下である、円満に終わりそうという場合には、行政書士や司法書士への依頼で十分といえるでしょう。

銀行

メリット

お金のスペシャリストである銀行でもサービスの一環として相続相談を受けており、馴染みの場所で心を開いて相談できるメリットがあります。特に投資信託銀行では、お客様が運用している資産を譲渡後も運用していけるようパートナーとして名乗りを挙げていますが、できる範囲はごく限られているのが現状です。

デメリット

基本的に引き続き運用していくようすすめるため、相続人が求める運用とは異なる場合もあるでしょう。また、できることに対して費用が高額な点が挙げられます。遺言状を制作する以外のことを引き受ける権限はないため、複雑な事情がある相続や円満にはいかないような相続であればおすすめはできません。

遺言状だけなら誰でもOK

もし、遺言状を制作するだけであれば代書屋さんの行政書士、国家機関である公証人に依頼するなど方法はいくらでもあります。基本的に形式さえ守られていれば誰が書いても遺言状は有効であり、自分で制作することも可能です。しかし、保管や手続きを考えるとそれぞれのスペシャリストに依頼するほうがスマートに進むでしょう。相続人間で争いがある、相続の形が複雑である場合には、特に専門家の力が必要です。自分に合った方法をじっくりと選びましょう。